【Q6】
小学5年生の息子と4歳の娘、妻と共に1年前に上海に赴任しました。
息子は最初は楽しそうにしていましたが、赴任から半年も経つと急に「学校に行きたくない」
とダダをこねたり、妹を叩いたりするようになりました。
現在ではほとんど登校していません。どこに相談をすればいいかも分からず悩んでいます。
【 A 】
ご家庭の事情など詳しいことは分かりませんが、子どもも大人同様に落ち込んだり、うつ状態
になったりするということが、最近の研究で分かってきました。
私たちが長崎県下で小学生5000人規模の調査をしたところ、5〜10 % が抑うつ的になってい
てもおかしくない状態で、中でも魚嫌いな子どもほど抑うつ群の割合が増加する傾向が認められ
ました。
子どもの抑うつ状態の特徴としては「急にワガママを言うようになる」「ペットを叩く」「友
だちに意地悪をする」「兄弟を叩く」という行動に見られるように、落ち込むというより怒りっ
ぽくなったり、イライラしているように見せることが多いといわれています。
そのような状態が長引くと次第に本格的なうつ状態となり、食欲の低下、急に泣き出す、体重が
変化しないといった症状が現れる場合があります。当然このような場合には、興味も低下する訳
で、登校に対する意欲もなくなります。上記の場合、軽い抑うつ状態の可能性も否定できません。
子ども抑うつの対応にはいろいろありますが、大人のうつ状態時の対応と同じように「慣れ親
しんだ場所での充分な休息」を取らせることが肝要です。またその場合、登校しないことに子ど
もが罪悪感を持っているケースも少なくありませんから、学校や保護者があまり「過剰な登校刺
激をしない」ことが大切です。
必要であれば一時帰国も視野に入れて考えてください。同時に、子どもにもある程度の薬物療
法が効果的な場合もあります。少量の抗うつ薬もさることながら、抑肝散や柴胡加竜骨牡蛎湯と
いった神経の高ぶりを抑え、心と体の状態を改善させる漢方薬を使うのも良いかも知れません。
私がよく勧めるのが漢方の母子同服という治療法です。これは、子どもの病気に母親と子ども
が一緒に薬を飲むことです。子どものメンタルトラブルには、母親も多くのストレスを抱えてい
る場合がしばしばあります。また、母親のピリピリと張り詰めた精神状態が知らず知らずのうち
に身近な子どもに伝わり、子どもなりに表現されて症状に現れているとも考えられます。よって、
そのどちらも治療しようという考え方です。
1〜2週間すると子どもも母親も両者が落ち着いてくることが多いようです。そして、その次の
ステップとして西洋薬を使うこともあれば、私たちの研究のベースにある「魚を好んで食べる子
どもほど抑うつが少ない」という調査から、魚油を中心としたサプリメントを勧める場合もあり
ます。
充分休養した後は、学校とのコミュニケーションは欠かせませんから、子どもを守るために、
保護者と主治医と学校とが同じテーブルでじっくり話し合う必要があるでしょう。
また医学的な視点からの、学校での対応法や指導法を含めた連絡状「紹介状」を保護者に持た
せて、それを学校の先生に渡すという手段も私はよく利用しています。
Dr.小澤の診察は、上海のセントミカエル病院 で受けることが出来ます。
詳しくは、上海診察室 をご覧になってください。