【Q4】
息子は小学校低学年の時あたりから、学校の先生からしばしば「忘れ物が多い」という連絡を
受けるようになりました。忘れものといっても筆箱などの小さなものではなく「ランドセル」
といった本来忘れそうもないものなのです。
本人はまったく悪びれた様子もなかったのですが、その癖は結局治らないどころか、徐々に
学校生活にも馴染めなくなり、中学校1年生で不登校になりました。
日本に帰国した後の将来を考えると不安でたまりません。
【 A 】
学校で起こりがちな子どもの問題行動の背景には、発達障害が隠れている可能性もあります。
知的に問題がなかったとしても、対人面でトラブルを抱えやすいアスペルガー障害や、集中力が
続かず落ち着きのない注意欠如多動性障害-ADHD-、また発達障害とは言えないまでも、読む、
書く、話すなどの特定の分野において困難をきたす学習障害-LD-などのため、集団生活に馴染
めずに苦しむ子どもが少なからず存在します。
いずれの障害も、低年齢のうちから必要なケアをすることで、成長後の本人の生きづらさを大き
く軽減することも可能です。
もともと人間の能力には偏りがあるのが普通で、大なり小なり得手不得手があるものです。
わざと手を抜いているように見えたとしても、本人は精一杯やっているつもりかもしれません。
たとえば、かけっこが苦手で完走するのがやっとなのに、「1等賞を取れなかったのはヤル気がな
いせいだ」と責められたらどうでしょう。問題行動をしつけ不足や本人の怠慢と決めつけてしまう
と事態が好転しないばかりか、子どもは萎縮してしまったり自信を喪失してしまったり、抑うつな
ど発達障害にともなう二次障害を引き起こすことにもなりかねません。
このような子どもたちは、どうしても親や教師に叱責されることが多く、友人間でもイジメの対象
になりやすいので注意が必要です。
ご相談のお子さんの場合、ADHDの可能性が高いかもしれません。
ADHDにおいては、薬物療法が著効することがしばしばあります。ADHDとの診断を受けたら、
必要に応じてメチルフェニデートやアトモキセチンなどの有効な薬を服用し症状をコントロールし
つつ、日常生活への適応能力をのばす理社会的療法に根気よく取り組んでいくことで、学校での適応
力が増していき不登校が改善されるかもしれません。
なによりもまず、両親がADHDをよく理解することです。そして、親を通して学校に問題を開示し、
配慮してもらうようにするという対応が非常に重要です。
兄弟がいる場合は、その子たちへの気配りも必要でしょう。
発達障害を抱えた子どもたちも、成長するにつれ徐々に問題を克服していくのでしょうが、現代の
管理強化型の学校はそれを待つゆとりを持ちません。昔に比べ、学校に適応しづらい状況にあるのも
事実です。
また、発達障害とは別に、家族、特に母親の心理状態が、子どもの情緒に反映されて問題行動に繋が
っているケースも見受けられます。海外赴任中という特殊な状況では、子育ての負担が母親に集中し
がちです。
お母さんご自身が多大なストレスを抱えていないか、抑うつなど、精神的不調を感じていないかを見
直してみることも必要でしょう。
Dr.小澤の診察は、上海のセントミカエル病院 で受けることが出来ます。
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